エースの心得〜濱口竜輝〜

こんにちは。庭球部2年の濱口です。ブログを書くにあたっていろいろと思案を巡らせました。ネタはいくつか思い浮かびましたが、今回は代替わりへ向けての覚悟を書き残します。大した才能もなく、一つのことを貫き通すこともできないのに無駄にプライドが高く、見栄っ張りなしょうもない男の、精一杯の覚悟です。

 人生初の大会で1回戦負けを喫し、応援の声も恥ずかしくて出せなかった中1のデビュー戦。千頭コーチに頼み込んで参加させてもらった初めての日曜特訓で、小学生すらできていたストレートラリーが続かず赤っ恥をかいた中2の夜。優勝するだろうと言われていた中2の全中予選を2回戦敗退に終わらせたD1の試合。なすすべもなく0-8で負け、悔しいとすら思えなかった初めての四国大会。準準決でひろみにあたり続けてシングルスベスト8ばかりだった中3の一年間。高1で県体メンバーに選ばれず、春野のローソンの裏の田んぼを2時間眺めた日。ノーシードからシングルス第3シードに5-7、ダブルス第2シードに6-7とチャンスを掴みきれなかった高1の県体。一番本戦にあがりやすいブロックを引いたのに負けたchampionship大会。初めての全国でガチガチになり、ごめんなさいと言いながらミスしたかけシンのマッチポイント。5-4 40-30のほぼ決まった逆クロスを返されて逆転負けし、初めての全国個人戦を逃したセンバツ県予選準決勝。ネットに2バウンドした取れるはずのないボールでマッチポイントを占められ、3冠を逃した最後の県体。もりしゅが痙攣しながら勝ってくれたのに自分が負けたせいでベスト4に進めなかった最後の四国総体。全日本ジュニア賭け一歩手前、7-6だったのに8-9で負けた四国予選。柳川と遊川木村ペアになすすべもなく引退させられた最後のインハイ。

 あの人はあんなに上手くいっているのにどうして自分はこんなにもチャンスを掴みきれないのだろうと、自分が嫌になる毎日でした。自分にはセンスがないのだと、ラケットなんかもう一生握りたくないと常々溢していました。それでも、或いはだからこそ、周りの人にしょっちゅう心配されるほど練習していました。次も負けて自分に自分の頑張りを否定されるのが怖くて、いつか絶対に報われたくて、何より練習している間だけは惨めな自分も赦されるような気がして。気がついたら自転車でコートへ向かっていました。練習したって自分の成長はわからなくて、ミスをするたび自分への悶々たる苛立ちが募るばかり。「練習が楽しいと思えるうちは強くならない」という宮崎コーチの言葉を根拠に、苛立つ自分は成長しているに違いないのだと信じようとし続けました。それでも、自分が望む結果を完全に収めることはできませんでした。

 そんな情けない中高時代を送った自分も、10月からは東大庭球部のエースです。次期主将の拓夢さんはただテニスを楽しんでくれればそれでいいとおっしゃってくださいますが、やはりチームの勝敗の責任は自分が持ってしかるべきだと思っています。自分が絶対勝つD1S1になれるかどうかがチームの安定感に大きく影響することはもちろん、自分が後輩にどれだけ大きな背中を見せてやれるかが、有望な彼らの成長を左右するわけですから、そんな言葉に甘える資格は到底ありません。今年の七大で全敗したことをきっかけに、そんな使命感と勝てない自分への焦り、苛立ちが一気に強くなりました。土佐高校男子硬式テニス部キャプテンだった自分にはあったのに、東京大学運動会庭球部1年の自分にはなかった感覚です。

またあの頃の陰鬱とした自分に戻ってしまうことが少し怖くもありますが、メンタルと試合結果がどんなに終わっていても、終わっていると自分が思っていても、たった5年のうちに高知県1回戦負けから全国大会で勝ち星を挙げるまでに成長したことは事実です。その原動力はといえば、こんな自分に期待をかけてくれた人たちに応えねばというプレッシャー、他の選手への燃えるような劣等感、結果がついてこないことへの呑み込まれそうな不安に他なりません。それらがあるからこそ、自分は人並み以上にコートに立つことができたのです。余裕のなさの内にこそ、自分の武器は輝くのだということを今一度思い出します。年賀状に「余裕があって見習いたい」などとお世辞を綴ってくださった先輩が複数いらして当時は舞い上がったものですが、よく考えればそれは最下級生という立場に甘えて自分を追い込めなかったがために生じた無責任な余裕です。満足に勝てず、部内でさえ1番になれないのに余裕があるなんて、むしろ大いに恥じるべきでしょう。惰性でただ楽しく練習・フリコするのではなく、できないこと、勝てないことにしっかり向き合っていきます。

その一方で、エースとしてはいつ如何なる時も、強さと余裕に満ち満ちた背中で味方を鼓舞しなければなりません。竜輝は勝つというチームの信頼、あいつには勝てないという相手へのプレッシャー。どんなに苦しくても、余裕を無くすと同時に余裕に溢れるべし。この矛盾を、高いレベルで成立させようというのが自分の決意、覚悟です。自分が十分強いという幻想、愉悦に浸っていいのは4年の最後のリーグだけ。どんなに苦しくてもその時までは、劣等感で以て自分を滅多打ちにし、ひたすらに努力を重ねるべし。

大丈夫、大器は晩成するのです。

以上です。失礼します。

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