The Art of Reality Jumping〜鈴木ノア〜
こんにちは。東京大学庭球部1年の鈴木ノアです。
予定がきっちり決まっていると安心する人もいると思いますが、僕はどちらかというと逆で、決まっていない状況のほうが落ち着きます。知らない国、知らない言語、暗黙のルールだらけの場所でも、意外とパニックになりません。まず見て、聞いて、状況を掴んで、とりあえず一手動く。
僕がいつも意識しているのはこれです。
Everything communicates something to someone, always.
言葉だけじゃなくて、沈黙、声のトーン、間、距離感、目線、ちょっとした仕草。そういう細かいものが、だいたい本音を出しています。そこが見えるようになると、初めての場所でも「なんとかなる」感覚が生まれます。僕はこの感覚を Reality Jumping と呼んでいます。
そしてReality Jumpingを繰り返すうちに、もう一つ大事なことにも気づきました。自分が「え、これ普通なの?」と思うことが、相手にとっては普通ということが本当に多い。だから僕は、まず受け入れてから考えるようにしています。ジャッジは後回しでいいと思っています。
ブダペストでの「一手」と適応の原点
この感覚が一番分かりやすく出たのが、18歳のときです。高校を卒業してすぐ、ほぼノープランで1か月ヨーロッパをバックパックしました。
ある夜、ハンガリーのブダペストで予約していたホステルが急にキャンセルになり、いきなり寝る場所がなくなりました。時間は夜9時くらい。正直、そのエリアが危ないかもしれないというのも分かっていて、少し焦りました。
でもなぜか、頭の中は変に冷静でした。チェスって、どんな盤面でも「最善手」があるじゃないですか。今は詰んで見えても、落ち着いて探せば次の一手はあるはずだと。
僕は近くのホステルを片っ端から探して、他の旅行者にも聞いてみたけど全部満員。最終的にウィーン行きの夜行バスを予約して、その場から前に進むことにしました。
この出来事で思ったのは、僕は別に怖いもの知らずじゃないということです。ただ、切り替えて解決策を探すのが早い。完璧な答えじゃなくても、とりあえずベストな一手を選んで動ける。それが僕のReality Jumpingなんだと思います。
「普通」が入れ替わり続ける環境で
そもそも僕は、こういう切り替えを昔からずっとやってきました。僕の生活はアメリカと日本で分かれていて、両方の現地校に通い、土曜日は朝日学園(補習校)へ行き、10年以上毎年のように日本で体験入学もしていました。
だから「普通」が常に入れ替わる生活でした。環境が変わるたびに、正解のテンションも、距離感も、礼儀の出し方も変わる。そういう経験が、自然と僕の適応力を鍛えてくれたんだと思います。
オーストラリアと中国でも感じたReality Jumping
オーストラリアでは、一つの都市の中にいろんな言語が当たり前に混ざっていて、それでも生活が普通に回っているのが印象的でした。
中国の南京でのインターンでは、テクノロジーやインフラの進み方に衝撃を受けました。特に、プロダクトそのもの以上に「流通」と「スピード」を優先している感じが強くて、全体として「世界が進む速度」が違うと感じました。
こうした経験を重ねるほど、僕の中で軸がはっきりしてきました。**まず学ぶ。まず受け入れる。違いを「変だ」と決めつけない。**そうすると見える情報が増えて、次の一手が打てるようになります。

東大庭球部という新たな現実とレガシー
そして今、東大庭球部に入ったことも僕にとって大きなReality Jumpingでした。でも不思議と、初めてなのに「帰ってきた」みたいな感覚もあります。テニスは個人競技だけど、庭球部の空気はすごくチームです。
誰かが困っていたら、わざわざ大げさに言わなくても自然に助ける。先輩が後輩をちゃんと見ていて、後輩もそれに礼儀で返す。そういう関係性があるから、安心して挑戦できる雰囲気が生まれるんだと思います。
僕もここに来て、「応援」だけがチームワークじゃないと強く感じました。早く来て準備をする。コート設営を手伝う。さりげなく声をかける。そうした小さな積み重ねが、結局一番強いのだと思います。
それに加えて、僕が特に感動したのが OB・OGの方々の文化です。卒業して何十年経っても部に関わり続け、支援してくださる。OB対抗や赤門納会のような場で実際にお会いすると、「この部活は学生の4年間で終わらないんだな」と感じます。
この庭球部は時代を超えて続くレガシーで、その歴史に参加できることが本当に貴重だと思っています。
最後に
世界はこれからもっと多文化になっていくと思います。背景も価値観も「普通」も違う人と出会う機会が増えていくなかで、大事なのは、最初から全部分かろうとしないこと。
最初は観察する。受け入れる。暗黙のルールを学ぶ。必要ならちゃんと聞く。そして「次の一手」だけ進める。そうすれば、新しい環境も意外と早く、自分の居場所になっていきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上です。失礼します。


