勝利
庭球部3年の倉持裕樹です。
今回ブログを書くにあたり、せっかくなので普段は話さないことについて書こうと思います。気楽に読んでください。
いきなりですが、僕は東大庭球部の中でおそらく、中高大合わせて一番テニスの団体戦を経験していると思います。その経験の中で、自分がこれまで感じてきた思いや考えについて書きたいと思います。
出身中学は桐蔭学園といって、神奈川県では毎回ベスト4以上に入り、関東中学生大会はもちろん、全国中学生大会にもよく出場する強豪校でした。
しかし、部員は3学年で150人超、その大半が幽霊部員でしたが、それでも4面しかないコートはいつも人で溢れかえっていました。
しかし自分はジュニアの頃からテニスをしていたのでそこには参加せず、週に一度、土曜日の午後にあるレギュラーだけの練習に参加して、平日はスクールで練習していました。
もちろん部活で夏合宿などはありましたが、かなり緩かったのを覚えています。
果たして、そんな状態での団体戦で応援に熱が入るかといわれると全く入らず、正直、先輩たちが負けても「みんな残念そうだな」というのが正直な感想で、あくまで他人事でした。1年の時の全中でも、自分たちの先輩の勝利より、他校の強い選手が気になったり、お土産の全中グッズのことばかり気になったりで、試合に関しては上の空でした。
そんな中、中3になり自分が主将としてレギュラーで出場し、関東中学生大会をなんとか勝ち抜いて全国への切符を手にしました。山口県でおこなわれた全国中学生大会は、初戦岩手中学に勝ち次の東海大菅生に負けてベスト16でした。この団体戦の記憶は、レギュラーだけで戦い、レギュラーだけが部員のような団体戦でした。もちろん、それは本当に、とても楽しかった記憶として今でも心に残っています。しかし、これから話す高校(桐蔭)での部活や団体戦で得られた経験とは全く別の種類のものでした。
高校の部活は中学とはなにからなにまで違いました。もちろん練習は義務で、練習中は声出しを切らさず、皆が必死に練習していました。アップから声を出し、ボール拾いはほぼダッシュで、練習にふざける雰囲気はありませんでした。練習中、一度ふざけた態度で練習していた同級生は、大学生のコーチにブチ切れられてリアルにけり飛ばされました。
団体戦の直前は、レギュラー以外はサポートに回って審判をしたり、コートを囲って声出しをしたりしていました。なので、部員としての一体感が中学とは比べものにならないくらいに強く、それだけ団体戦に張り詰める空気はとても重たかったのを覚えています。
ですので、先輩とはとくに仲が良かったわけではなかったけれど、普段から必死に練習する姿は皆見ていたし、だからこそ、団体戦では自分を含め誰もが試合に勝ちたいという思いで必死に応援をしました。しかし、僕の一個上の代は、僅差で法政二校に破れ、目標としていたベスト4に届くことはかないませんでした。
その日は全員が泣きました。後輩である自分たちは、この悔しさを忘れぬよう、また練習を再開しました。
高3になると、自分もレギュラーとして試合にでるようになりました。そして、最後の大会、ベスト4決めで宿敵の慶應義塾高校とあたり、自分はダブルスで出場しました。
もはや、皆この日のために毎日、必死に部の雰囲気を良くし、声出しをしてきたといっても過言ではありません。自分をみる応援の目からは、「本当に勝ちたい」という思いがひしひしと伝わってきました。自分がポイントをとると応援が喜び、それに鼓舞されてまた次のポイントに移る。ようやくやってきたマッチポイント、5?3の40?30、このときの張り裂けるような空気はいまでも忘れません。ペアのリターンが相手の前衛のストレートを抜き試合が終了した時、自分は無意識にラケットを放り投げ皆の歓声が遠のいたのを覚えています。そして、全体もスコア2?1で勝利したとき、初めて、試合に出なかった部員がチームの勝利で泣いているのを見ました。部活をやっていてよかったと思えた瞬間でした。それは中学では決して得ることのできなかった特別な体験でした。
そんな団体戦に憧れて、自分はこうして大学に入っても東大庭球部でテニスを続けています。
部員一人一人の発言・行動・練習態度が、良い形にも悪い形にも全体に影響を与えることを意識し、ささいなことでも良い影響を生み出すことで、最後にそれが最高の結果となって現れてくるのだと思います。
もちろん、各自テニスを上手くなろうとする努力も重要ですが、それよりもどうすれば強い部になるか、どうしたら強いチームに見えるかを考え、強い組織としての雰囲気を作る努力が必要だと思います。その努力はテニスと違って無駄な努力になることはないですし、テニスの上手い下手の差別なく人それぞれ色々な方法があると思います。
よく、「なんのために大学で部活に入るか」いろいろな意見を聞きますが、礼儀作法は社会にでれば嫌でも身につくし、楽しみながらテニスが上手くなりたいなら、サークルで友達を作りつつスクールに通うほうが、部活の拘束時間を考えるとコスパは良いです。
そうではなく、部活だからこそ、皆の努力の結晶として最高の結果を生み出し、勝利の喜びを肌で分かち合うことができるのではないでしょうか。僕はそんな一味違った勝利を、東大庭球部で達成したいと考えています。